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2006年発行 全320ページ
状態:中古 概ね良好
■本書解説より■
近代ガラスびんの黎明
わが国においてガラスびんの製造が始まるのは、明治時代初期のことです。
それ以前はというと、幕末の文政・天保年間の頃、江戸にガラス製品を専門に扱加賀屋と
上総屋というぎやまん問屋がありましたが、その加賀屋の引札を見ると、
「薬籠瓶」、「舶来広口瓶」、「細口瓶」などのびんが売られていたことがわかります。
また、商品として売り出された特殊な例としては、文化七年頃、江戸の戯作者・式亭三馬が、
「おしろいのよくのるくすり、江戸の水」という謳い文句で、
ガラスびん入りの化粧水を売り出したことが知られています。
とはいえ、薄い吹きガラスのびんは別にして、ぎやまんのびんは高価なもので、
簡単に庶民の手に届くものではありませんでした。
一般庶民のためにガラスびんが製造されるようになるのは、
加賀屋の系列になる加賀定こと沢定二郎が、東京本所の松井町に工場を設けて薬びんを吹いた
明治二年頃ということになります。
当時、東京や大阪には相当数の製びん工場があったと記録にはありますが、その実態については定かではありません。
おそらくそうし工場では、小ぶりの薬びんなどが吹かれていたのでしょう。
けれども、その技術はまだまだ稚拙なものでした。
ワインやビール、清涼飲料水などのびんについては、
明治十年代までほとんど舶来品に頼っており、
国内で生産する技術はないに等しかったと考えられています。
実用に堪えうる国産のビールびんが誕生するのは、政府によって明治九年
に設立された工部省品川硝子製造所が、民間に払い下げられて
有限責任品川硝子会社となった二十年代を待たなければなりませんでした。
その当時のびんは、人口吹きといって職人の手によって吹かれており、
機械吹きによる製造は、大阪に東洋硝子製造株式会社が設立された明治三十九年からで、
それ以降、徐々に本格的な量産がなされ、広く庶民に普及するようになったのです。
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